福岡市の中心部から車で約30分程走ると、少しずつ緑豊かな風景が現れます。そんな福岡市早良区にある「さわら老健センター」に伺いました。入所・通所での機能回復を目的としたリハビリ、認知症の予防や進行抑制を目的としたリハビリやレクリエーションを行っている介護老人保健施設です。近くには室見川が流れ、山も望める風景の中に建つ大きな建物です。リハビリ室のある3階を案内していただきました。
作って、飾って、眺めて、歩く「アートロード」
まず目に飛び込んでくるのは、明るい陽が差し込む、特徴的な長い廊下。真中に中庭があり、周回できる廊下となっているのです。
一周が70mでそこを利用者さんが歩行訓練として歩くそう。そしてただ歩くだけでなく、楽しみながら歩く工夫として、廊下の壁には利用者さんが作った作品が飾られています。その名も「アートロード」。貼り絵や塗り絵、オリジナルのアートの他に、多くの場所に飾っていただいていたのが、さくらほりきりのきめこみパッチワークです。それも大作ばかり!すべて利用者さんが作られたものだそうです。
直線も長い廊下!ぐるりと一周できます
絵柄も、季節の花々や風景から縁起物まで、様々なものが並びます。「季節感を感じられるように、季節ごとに飾り変えたりします。作品はご自宅へお持ち帰りいただきますが、次の作品が仕上がったら飾ってね、と言われる方もいてモチベーションになってもいます。」と話されるリハビリ担当の吉村美奈子さん。毎月、利用者さんの希望をまとめて注文いただいています。
「ひとつ作り上げて、また次の注文という方もいますが作るものが途切れないよう2~3個まとめて注文するという方もいらっしゃいます。自分から楽しく取り組めるものがある、ということがありがたいです。」と話されます。
きめこみパッチワークだけでなく、脳トレなどのためになるコーナーも
アートロードには作品を飾ってあるだけでなく、歩いた記録を残しておけるよう、スタンプ台を設置。皆さんが楽しく目標を持って歩く姿が浮かんできます。
「飾って人に見てもらうだけで、モチベーションになっているほか、作品を見て作った方に「見たわよ」って声を掛けたり、作っているところで会話になったりとコミュニケーションツールにもなっているんです。」と教えていただきました。
手作りのプレートと、楽しく歩いているのが分かるスタンプ台
喜ぶ姿が見られて心身ともに元気に
それにしても大作が多く、作るサポートは大変では?とも思います。そのことには、
「最初は、両手でしっかり出来る方だけと思っていました。でも今は片手でも、できることだけでもOKにしています。やはりやりたいことなら意欲的に取り組むことができるので、そういう気持ちがある方には続けて欲しいんです。仕上がって額に入れた時の皆さまの反応がすごく良い。喜ぶ姿を見られるのが嬉しいというのもあるけど、喜ぶこと自体が心身にもすごく刺激的で、元気になるということを感じます。」と吉村さんは話します。
取材の日も、98歳の利用者さんがP10号の「フレンチリバー」を作られていました。切るところからきめこむところまでのほとんどを、おひとりでされるそう。製作をサポートされていたスタッフの方も「布をバランスよく置けているかだけを見ています。」と話されている通り、しっかりとした動作できめこまれていました。
最大サイズのP10号を作られていることに驚きと感動!
楽しみながら作り、作り上げた喜びを感じ、そして色々な方に見てもらったり、作品を眺めながら歩いてリハビリをする。素晴らしい取り組みの一端を担うことが出来、感激。新作を心待ちにされているとのことで、今後も皆さまに楽しんでいただける新作の開発に取り組んでいきたいと思いました。
吉村美奈子さんとアートロードの作品。初夏の頃に伺ったので、夏に向けた作品が並んでいました。
きめこみパッチワークについてはこちら▼
https://www.sakurahorikiri.co.jp/f/series/s001